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連載・特集

ホロコーストの中の子どもたち 福山の記念館 所蔵品から <2> アンネ 幸せのメロディー

 ホロコースト記念館の建設は、アンネ・フランク(1929~45年)の父オットー氏との出会いが発端だった。アンネは日記で「どうして人間は仲良く暮らせないのか」と投げ掛ける。その答えを探して生還者と語り合い、各地の収容所を訪ね歩いた集大成が記念館である。

 オルゴールはアンネのいとこの、故バディー・エリアスさんから寄贈された。アンネは4歳上のバディーさんを兄のように慕い、オランダに亡命するまで、ドイツで共に生活していた。アンネ一家は42年にアムステルダムの隠れ家に潜伏。作家志望のアンネが、窮屈な暮らしの中で希望を失わず生きた証しをつづったのが「アンネの日記」だ。

 オルゴールは当時、ドイツで愛唱されていた「幼いハンスぼうや」など二つの童謡を優しく奏でる。同曲の美しいメロディーは、歌詞を変えて日本に伝わり、「ちょうちょ」として、親しまれている。木で組み立てられたもので、ねじはよく使われていた跡を残す。

 アンネは幼かったころ、きっとオルゴールを枕元に置いて、共に眠っていたことだろう。幸せだった頃のアンネを想像させる、貴重な遺品だ。(ホロコースト記念館・大塚信館長)

(2019年4月29日朝刊掲載)

ホロコーストの中の子どもたち 福山の記念館 所蔵品から <1>

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ホロコーストの中の子どもたち 福山の記念館 所蔵品から <5> 収容服 過酷な生活語る

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