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社説・コラム

天風録 『タマネギとイラン』

 みずみずしい新タマネギが所狭しとスーパー店頭に並んでいる。血液サラサラを願う職場の同僚によると、さほど辛くないので丸かじりもいけるが、リンゴを混ぜてジュースにするのが一番とか▲原産地とされるイランの人も大のタマネギ好きと聞く。香辛料代わりに、生のままボリボリかじったりもする。それなのに、このところのインフレに洪水被害の影響も加わり価格は高騰。食卓から遠のいているらしい▲核開発を自制する「イラン核合意」の一部棚上げをロウハニ大統領が言いだした。それは、勝手に約束をほごにしてイランへの制裁強化に転じた米トランプ政権への対抗策。タマネギに象徴される経済混乱から国民の目をそらす意図もありそうだ▲だとしても、かの国に同情こそすれ、核カードを切ったことに同調はできそうにない。北朝鮮もそうだが、いかなる理由であれ核開発を認めるならば、人類滅亡の日まで核拡散のスパイラルが際限なく続きそうだから▲さらにいまいましいのは、イランを追い込んだイスラエルも米国も、核兵器を大量に持つこと。辛いタマネギが煮たり炒めたりすれば甘くなるように、地球上から核をなくすレシピはないものか。

(2019年5月10日朝刊掲載)

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