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社説・コラム

[広島とアフリカ] 国連ユニタール広島事務所長 隈元美穂子さん

希望の大陸 意外に身近

 広島が被爆70年を迎えた2015年、私は初めて南スーダンを訪れました。国連ユニタール広島事務所での新たな研修事業を始動させるためです。

 11年にスーダンから独立し、国際連合に加盟したばかりの新しい国。まだ平和が定着したとは言えません。驚いたのは、そこで出会った全ての人々が広島をよく知っていたことです。南スーダンでは、広島は復興の象徴であり、希望の星なのです。

 国連での仕事を始めて18年以上が過ぎ、幼い頃は遠く感じていたアフリカは今、私にとって身近で大切な地となりました。

 私だけでなく、多くの人が広島を拠点にアフリカと深いつながりを持ち、絆を強めています。国際機関、大学、市民団体…。さまざまな立場からアフリカに関する活動をしている有志で最近「広島アフリカ会」を結成しました。今日から始まるこのリレーエッセー「広島とアフリカ」は、そのメンバーの経験や気付きを紹介していきます。

 193ある現時点での国連加盟国のうち、約4分の1の54カ国がアフリカにあります。少子化に悩む日本とは逆に、人口は爆発的に増えており、肥沃(ひよく)な土地と豊富な資源があります。

 無限大の可能性を持つ一方で、戦争、貧しさ、飢えといった多くの大変な問題にも直面しています。希望と可能性、重くのしかかる課題と明暗を持つのがアフリカです。そこで人々はたくましく生きています。

 このリレーエッセーを通じて、広島の皆さまにもアフリカのことを少しでも身近に感じてもらえれば、と願っています。8月末には横浜でアフリカ開発会議(TICAD)7が開催され、首脳陣が来日する予定です。アフリカの人々や現状について目に留まる契機になればと期待しています。

くまもと・みほこ
 福岡県太宰府市出身。コロンビア大大学院卒。九州電力を経て、2001年から国連開発計画に。14年から現職。アフリカ諸国への人材育成支援などを手掛けている。

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 「広島とアフリカ」はアフリカ支援などに取り組む広島ゆかりの方による寄稿です。

(2019年5月12日中国新聞セレクト掲載)

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