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爆音・振動 全身貫く 在日米軍 硫黄島の離着陸訓練公開 

岩国基地の艦載機参加

 在日米海軍司令部(神奈川県横須賀市)は17日、東京都の硫黄島で9日に始めた空母艦載機の陸上空母離着陸訓練(FCLP)を報道陣に公開した。同島はFCLPの暫定的な訓練場所とされ、同司令部は恒久的な訓練施設の確保を「最優先事項」と説明した。

 この日の訓練には、原子力空母ロナルド・レーガンを母艦とする第5空母航空団のパイロット約30人が参加。昨年3月に米軍厚木基地(神奈川県)から岩国基地(岩国市)への移転が完了した艦載機のFA18スーパーホーネット戦闘攻撃機を使い、離着艦技術の維持・向上を図った。

 全長2650メートルの島の滑走路を空母の甲板に見立てて離着陸を繰り返し、ごう音を響かせた。訓練は19日までの予定。悪天候時などの予備施設として岩国や厚木など国内3基地が指定されている。

 FCLPを巡り、日米両政府は2011年に馬毛島(鹿児島県西之表市)を移転候補地に挙げた。しかし日本政府による地権者側との買収交渉は難航している。(松本恭治)

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訓練ルポ

 激しいごう音とともに振動が全身を貫く。米軍岩国基地から南東に約1400キロの硫黄島を17日に訪ね、空母艦載機のFCLPの実態を見た。

1分間隔で機体次々

 島のほぼ真ん中にある滑走路。上空に機影が見えたかと思うと、全長約18メートルのスーパーホーネットが時速約200キロで突っ込んできた。車輪が接地するとすぐに離陸する「タッチ・アンド・ゴー」だ。

 訓練では4~6機が同時に飛行。1分ほどの間隔で次々と機体が目の前に現れては消え、耳栓なしでは耐えられない爆音がとどろく。夜間は艦載機の放つ光が島の上空に曲線を描いた。

 「空母の着艦エリアは限られる。パイロットはいかなる状況にも瞬時に反応しなければならない」。在日米海軍司令部の作戦・計画・訓練参謀長補のドワイト・クレモンズ大佐はFCLPの重要性を説いた。飛行パターンや高度が習慣になるよう体に覚え込ませるのだという。

「馬毛島 要件に合う」

 訓練の意義に加え、同司令部が報道陣にアピールしたのは恒久的な訓練施設の必要性だ。硫黄島の周辺に緊急着陸できる滑走路はなく、艦載機の岩国移転で島への飛行距離も約200キロ延びた。第5空母航空団司令官のフォレスト・ヤング大佐は「運用上、大きな危険を伴う」と訴えた。

 馬毛島を巡り、日本政府は今春にも地権者と売買契約を結ぶ方針だった。しかし地権者側が今月に入って交渉打ち切りを通告し、先は見通せない。クレモンズ大佐は「馬毛島は要件に合う」としつつ「要件さえ合えば場所はどこでも構わない」と言葉を選ぶ。

 恒久施設の整備が進まない中、岩国基地はFCLPのたび予備施設に指定される。一方、昨年5月のFCLPは延長や中断を経ながら硫黄島で全ての訓練を完了した。ならば、予備施設の指定は必要ないのではないか―。クレモンズ大佐に疑問をぶつけた。

 「やむを得ず予備施設でやる場合はある」。クレモンズ大佐は従来の説明を繰り返し、2017年に台風の影響を理由に厚木で実施した例を挙げた。艦載機が移った岩国でも今後行われることはあるのか。目の前で訓練を重ねる機体を見ながら、必要な運用と騒音軽減の両立の難しさを改めて思った。(松本恭治)

(2019年5月19日朝刊掲載)

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