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連載・特集

ホロコーストの中の子どもたち 福山の記念館 所蔵品から <4> 死体焼却 焦げたれんが

 焼け焦げたれんがに、ユダヤ人の苦しみを思う。アウシュビッツ強制収容所の死体焼却炉の壁に使われていた。欧州各地に建てられた強制収容所のうち、ガス室のある絶滅収容所は6カ所。アウシュビッツだけで最大規模の約100万人が犠牲になったとされる。機械的な殺りくの象徴だ。

 ユダヤ人は家畜列車に乗せられて絶滅収容所に送られ、そこで選別された。「働ける者」は番号の入った入れ墨をされ、重労働を課せられた。老人や病人、子どもたち「働けない者」は「シャワーを浴びせる」と言われ、ガス室へ運ばれた。

 誰よりも先に殺されたのは、未来のある子どもたちだった。身長120センチ以下は直ちにガス室に送られるため、靴の中に石を入れて少しでも大人に見せようとする子もいた。200人ほど詰め込まれたパニック状態の部屋の中に、ガスがそそがれると、全員が十数分で息絶えた。

 記念館では、ユダヤ人を移送するために敷かれたレールの留め金、収容所を囲んだ有刺鉄線も展示している。ユダヤ人の悲哀の叫びを聞いた遺品たちに、心を寄せてほしい。(ホロコースト記念館・大塚信館長)

(2019年5月20日朝刊掲載)

ホロコーストの中の子どもたち 福山の記念館 所蔵品から <1>

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