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連載・特集

緑地帯 菊池智子 インド平和日記 <5>

 インドにも私立校と公立校がある。私立には裕福層の子どもたちが通う。公立は無償だが教育の質や環境は落ち、社会的経済的弱者層の子どもたちが通う。

 私はなるべく公立校の生徒と交流する平和教育プログラムを目指している。政府機関への許可申請など手間はかかるが、その苦労と引き換えに、生徒を通してその家族にまで平和のメッセージを届けることができる。

 「ひろしまのピカ」と「夕凪(ゆうなぎ)の街 桜の国」の平和教育プログラムでは200人の公立中高生が感想文を書いた。原爆が多大な人命を奪うことや、放射線の影響が続くことを知らなかった、原爆をなくしたい、平和は絶対実現できると力強くつづった。ヒンディー語で一生懸命書いてくれた感想文は、インドの子どもたちが平和を願う貴重な記録として、英訳と和訳をつけて小冊子にした。

 被爆70年には、中国新聞ジュニアライターとインドの公立中高生がインターネットのスカイプで直接交流した。日本の戦後復興を知り、努力は必ず実ると勇気づけられたとインドの生徒は語り、日本の生徒は、今の広島は外国人観光客も多くなったと話した。両国の生徒の考え方や生活環境には相当の違いがあり、質疑応答にもその差異は表れていた。お互いが触発されるとても意義深い機会となった。両国生徒は距離を超えて折り鶴作品を共同制作し、平和記念公園の原爆の子の像に奉呈した。

 教員からの要請も多く、このようなプログラムをもっと多くの公立学校と実現するシステムをつくれないだろうかと模索している。(翻訳家=ニューデリー)

(2019年5月30日朝刊掲載)

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