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青い目の人形 平和願い託す 友好の証し 本川小へ米国の夫妻

 昭和初期に米国から日本の学校に親善使節として「青い目の人形」を贈る活動を進めた米宣教師の孫に当たる米メリーランド大教授のシドニー・ギューリック3世(82)と妻の数学者フランシスさん(78)が31日、広島市中区の本川小を訪れ、新しい人形をプレゼントした。6年生61人と交流し、平和の願いを託した。(小林可奈)

 ケイティと名付けられた人形は高さ約50センチ。茶色の髪を結わえ、ピンクのシャツに水色のスカートを身に着ける。手提げのかばんには、フランシスさんが手作りした着替えのシャツとズボンが入っている。名前や誕生日などを記した「パスポート」も添えられた。

 青い目の人形は、シドニー・ギューリック博士(1860~1945年)が提唱し、1927年に日本全国の学校に約1万3千体贈られた。県内には326体が届いた。当時、米国では日系移民を排斥する動きが強まり、日米関係の悪化を心配してのことだった。「日本資本主義の父」とされる実業家の渋沢栄一も、協力したとされる。

 ただ、多くが戦時中に敵国の人形として処分されるなどした。県内で現存しているのは福山市、尾道市、呉市の計5体という。

 祖父の遺志を継ぎ、夫妻は1987年、日本の小学校や幼稚園に「新・青い目の人形」を贈り始めた。これまで全国で292体、県内では福山市や呉市の小学校などに22体を届けた。

 この日は児童を前に、シドニーさんが青い目の人形の歴史を説明。日本語で「皆さんこれからも仲良くしてください」と呼び掛けた。子どもたちは感謝の思いを込めて「ひろしま平和の歌」を披露した。

 シドニーさんは「子どもたちには、ケイティを友人と思ってもらいたい」。フランシスさんは「外見に違いはあっても、同じ思いを共有できることを感じてほしい」と願った。

 夫妻の優しいまなざしに触れた田中乃愛(のあ)さん(12)は「人形を通じて、下級生たちに平和の大切さを伝え続けたい」と誓っていた。

(2019年6月1日朝刊掲載)

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