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南方留学生の遺影 初登録 追悼祈念館 マレーシアの孫が持参

 広島で被爆した「南方特別留学生」の遺影が、国立広島原爆死没者追悼平和祈念館(広島市中区)に初めて登録された。広島文理科大(現広島大)で学んだ現マレーシア出身のアブドル・ラザクさん(2013年に88歳で死去)。孫のザイリ・ズージャストリさん(38)が持参した。

 写真は若い頃のスーツ姿で、裏面に被爆から18日後に当たる「昭和廿(20)年八月廿四(24)日」と記されているが撮影日を指すかどうかは不明。本人が生前保管していた。

 ラザクさんは1944年に来日し、授業中に被爆した。帰国後は日本語講師として両国の人的交流に貢献した。「原爆ドーム近くで負傷していた女性を助けられず罪悪感を持ち続けた」とよく話していたという。南方特別留学生は8人が被爆し2人が犠牲になった。

 首都クアラルンプールに住むズージャストリさんは今回、家族で被爆地を初訪問。原爆資料館では、展示を一新した本館の外国人被爆者のコーナーでラザクさんの紹介展示に見入った。「日本に来て彼の人生は大きく変わったが、つらい経験を経て人を大切にする気持ちを持ち続けた」と在りし日の祖父を思い起こしていた。(山本祐司)

(2019年6月17日朝刊掲載)

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