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8・6の拡声器「条例規制すべき」69% 広島市アンケート

 8月6日の平和記念式典の際、デモ団体による拡声器の音を条例で規制すべきかどうかを尋ねた広島市の市民アンケートについて、市は18日、式典に出席したり、テレビで視聴したりした人のうち「条例で規制するべきだ」とした意見が69%あったと明らかにした。本年度の式典で会場の平和記念公園(中区)でも、参列者にあらためてアンケートをする考えを示した。

 市議会定例会の一般質問で松井一実市長は「式典中に被爆者や遺族がうるさいと感じる音が聞こえている状況は、式典の目的を達成する公共の福祉を損ないかねない」と強調。本年度の式典では、デモ団体の拡声器の音量を測定する方針を明らかにした。

 松井市長は調査結果や市議会での議論も踏まえて、「被爆75周年にあたる来年の式典では、条例の制定も視野に入れつつ、実効性のある方策を検討したい」と述べた。木戸経康氏(自民党市民クラブ、安佐北区)の質問に答えた。

 アンケートは市が昨年12月、無作為に抽出した18歳以上の市民3千人に郵送で実施。過去5年に式典に出席したり、テレビなどで見たりしたことがある人に、式典中のデモの声を「うるさいと感じた」「感じなかった」のどちらだったかを尋ねた。さらに静粛な環境を保つための対策として、条例を定めて規制▽従来通り、デモ団体に音量を下げるよう要請することにとどめる▽その他―のいずれかを選択してもらった。有効回答の割合は41%だった。

 デモ団体などは表現の自由を制限するなどとして、市に規制しないよう繰り返し申し入れている。デモを主催する「8・6ヒロシマ大行動実行委員会」の大江照己共同代表は「表現の自由を踏みにじる方向に誘導し、圧力をかけてくる市の姿勢に抗議したい」と批判した。(永山啓一)

規制には慎重な検討必要

  広島市立大広島平和研究所の河上暁弘准教授(憲法学)の話
 憲法で保障された表現の自由は民主主義を守るため極めて重要な権利だ。市が規制するのなら、よほど慎重な検討が求められる。表現の「時間、場所、方法」の制限は認められる余地があるが、差し迫った危機があり、ほかに手段がない場合に限られるべきだ。

 市が市民アンケートなどの手順を踏んでいることは評価する。ただデモの声が「うるさいかどうか」を尋ねるのではなく、「式典の目的が阻害されていると思うかどうか」を聞くなど質問内容は精査してほしい。「不愉快だから規制する」という議論なら乱暴だ。

 一方でデモ団体側もなぜ抗議活動が式典の前後ではなく、式典の最中でなければならないか、説明が必要だ。市は式典の在り方を考える対話集会を開くなど、十分な議論が必要だ。

(2019年6月19日朝刊掲載)

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