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社説・コラム

天風録 『沖縄の海、大地』

 戦後間もない沖縄で畑を耕していると、しばしば農具が地中で堅い物に当たったそうだ。不発弾である。子どもが見つけて、おもちゃにすることも。理不尽な地上戦が終わっても、暴発によって、住民が犠牲になる事故が相次いだ▲その危うさは今も身の回りに潜む。先月末、宜野湾市の小学5年の男児らが畑の近くで拾い、投げ合ったのは手りゅう弾。握りやすく「キャッチボール」にちょうどよかったか。信管が壊れていて大事に至らず済んだ▲きのう慰霊の日。米軍基地が集中する負担を軽減すると、安倍晋三首相は決意を示した。昨年、米軍から返還された土地を生まれ変わらせ、成功例にしたいとも。しかし、その地中には「負の遺産」が眠っているかもしれず▲74年たっても、約2千トンもの不発弾が地中に埋まっている。その処理には70年かかるといわれる。それで、青い海に目を付けたのか。新基地を造るため、政府は民意をものともせず、辺野古の埋め立てを強行している▲地元の小6、山内玲奈(れな)さんが追悼式で「平和の詩」を披露して問うた。海、大地、空は何を見て聞いて涙したのか、と。沖縄の地と人を、もうこれ以上危険にさらしてはならない。

(2019年6月24日朝刊掲載)

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