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ヒロシマの今 切り取る50点 出雲出身・藤本巧さん 広島で写真展

 出雲市出身の写真家藤本巧さん(69)=奈良県=の個展「ヒロシマ―平和への門は 隣人愛によって」が10~12日、広島市中区の旧日本銀行広島支店である。広島市内の被爆建物のほか、慰霊行事に臨む人々や、力強く生き続ける被爆樹木にもレンズを向けている。

 昨年からの東京、パリに続く開催。2017年から今年にかけて撮影した写真の中から、約50点を展示する。

 8枚の写真で構成する「原爆ドーム」は、ドーム前を行き交う人々の間に閃光(せんこう)のような日が差し込む縦2メートル、横3メートルの作品。原爆の爆風でゆがんだ旧広島陸軍被服支廠(ししょう)の鉄扉や、多くの負傷者が運ばれた似島の旧陸軍検疫所桟橋を撮った作品も並ぶ。

 韓国人原爆犠牲者慰霊祭に参列する民族衣装姿の女性たちや、対岸の原爆ドームに向かってバイオリンを一人奏でる音楽家を切り取った作品も。日差しに照らされる平和記念公園の被爆アオギリを撮った一枚は、強い生命力を感じさせる。

 藤本さんは、日韓に関わる歴史の現場などを約50年撮影してきた。2年前、広島市であった芸術イベントの撮影を機に、ヒロシマもテーマに加えた。「被爆建物である会場の空気に触れ、これまでの展示とは違った趣も生まれるのでは」と話している。

 会期中、同題の短編映画の上映のほか、初日午後6時からは音楽公演もある。いずれも無料。(編集委員・伊東雅之)

(2019年7月9日朝刊掲載)

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