×

ニュース

広島市平和宣言への核禁条約署名要望 松井市長 意見踏まえ文言検討

「被爆者の思い根底に」

 広島市の松井一実市長は11日の記者会見で、平和宣言で日本政府などに対し核兵器禁止条約の署名・批准を明確に求めるよう被爆者団体から要望されたことについて、「存命のうちに核兵器廃絶を見届けたい被爆者の切なる思いが根底にある」との認識を示した。一方、宣言で政府方針を直接的に批判する手法に実効力があるのかを疑問視。12日に有識者たちでつくる懇談会の意見を踏まえ、文言を検討する考えを示した。

 松井市長は要望について「被爆国が被爆者と同じ気持ちで行動することを切に望んでいることの表れ」と強調。一方で「(宣言で政府に対して)やってないことをあげつらい、やれということを直接やるのが効果的なのか」と述べ、政府要望は大半の国内自治体が加わる平和首長会議(会長・松井市長)として進めてきたとした。

 また、「宣言はヒロシマの心を世界共通の価値観にするために行う」との従来方針は今後も続ける意向を強調。「(要望と自らの方針との)調整をどうするかを検討している」とした。

 市はこの日、懇談会のメンバーで体調面を考慮して本年度は出席していない県被団協の坪井直理事長(94)の意見聴取がまだできておらず、近く実施する考えも示した。坪井氏は昨年8月6日、同日の平和宣言について取材に対して「なまっちょろい。政府のお膳立てをする行政の色が濃くなってきた」と述べていた。

 松井市長の2017年と18年の平和宣言は、政府に対し禁止条約の署名・批准を求める直接の言葉はなかった。二つの県被団協など被爆者6団体は4日、明確に署名・批准を求めるよう市に要望書を出している。(水川恭輔)

松井市長 会見での主なやりとり

 平和宣言を巡る松井市長の会見での主なやりとりは次の通り。

  ―被爆者からの要望に応える文言を盛り込みますか。
 要請は、長年核兵器廃絶を訴えてきた被爆者の方々が存命のうちに廃絶を見届けたい切なる思いが根底にあると受け止めた。被爆国日本が被爆者と同じ気持ちで行動することを切に望んでいることの表れと思う。

 私は、平和宣言は被爆者の思い、ヒロシマの心を世界共通の価値観にするために行うものと位置付け、これからもそうしたい。要請にある被爆者の思いをどのように反映させるか。この考え方をベースに、懇談会での意見も聞きながら、しっかりと検討したい。

  ―昨年の宣言にある、禁止条約を核兵器廃絶への「一里塚」に、との文言は条約賛同を呼びかけているのですか。
 条約は発効しなければ、絵に描いた餅。発効のためには条約を批准することが要る。それを込めて書いたつもりだが、丁寧に書いていないということかもしれない。

 日本政府に(批准を)やれと宣言に書いていないことを言われているのは分かるが、その足りない部分は平和首長会議の立場では、きちっと言っている。

 (宣言で政府に対し)やってないことをあげつらい、やれということを直接やるのが本当に効果的なのか。指摘の仕方は、工夫しないといけない。

  ―松井市長の平和宣言は毎年、日本政府へ要望するくだりがあります。要望内容として、禁止条約の署名・批准は重要度が低いのですか。
 そうは言ってない。政府に言っている部分は、被爆者の援護措置をやってくださいという視点から結びで必ず言うようにしている。

  ―今回の要望を受け、懇談会の人選や議論の公開などの見直しは考えますか。
 より発信力が強い宣言にするため、メンバー構成をどうするかという視点での見直しは常にあってよい。素直に話していただけるのは非公開の成果。議論は非公開でよいと思う。

(2019年7月12日朝刊掲載)

年別アーカイブ