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変遷映す広島地図 復刻 あき書房石踊さん 軍都や復興 5枚

 明治から大正、昭和期にかけて発行された広島の市街地図5枚を、広島市南区の古書店「あき書房」が復刻した。陸軍第5師団が置かれるなど軍都化が進む姿や、被爆の惨禍から復興へ向かう移り変わりを見てとれる。市公文書館(中区)や広島県立文書館(同)が未収蔵の地図もあり、資料価値も高い内容だ。

 日清戦争が起きた1894年をはじめ、1904年、15年、30年、46年発行の5枚。同書房を営む石踊一則さん(66)が約20年かけて収集した地図から、戦争や原爆投下によって広島の町並みが様変わりする節目の前後を選び、復刻した。

 1894年の「改正実測広島市街全図」は市内業者が発行。広島城内の西練兵場や江波地区の射的場などが描かれ、城下町から軍都へ変わりゆく時代を映す。1904年と15年、30年の3枚も民間で作られた地図。現在の山陽線や路面電車の整備が進み、農地だった湾岸に学校や工場が建つなど都市化の進展がうかがえる。

 被爆翌年の46年に市共済組合が発行した「広島復興都市計画街路網公園配置図」は、現在の平和大通りと、湾岸に計画されたもう一つの「100メートル道路」を記す。平和記念公園も公園用地として斜線で示している。

 市公文書館では5枚のうち04年と15年の原本を収蔵していない。「民間地図は種類が多く、全てを把握するのは困難」と中川利国館長。「年代を追ってそろえ、復刻する取り組みは、広島デルタの土地利用や産業、交通の変遷をより分かりやすく感じ取ってもらえるはずだ」とみる。

 復刻地図は5枚一組で1500円。石踊さんは「広島は軍都となり、原爆投下の悲劇に見舞われた。その歩みをたどる資料として役立ててほしい」と話す。同書房Tel082(255)1916。(林淳一郎)

(2013年3月27日朝刊掲載)

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