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拡声器制限 条例も視野 来年の式典 広島市が検討本格化

 広島市は被爆75年の来年に開く平和記念式典に向けて、厳粛な環境を確保するための検討を本格化させる。会場の平和記念公園(中区)周辺でデモや集会をする人に対して、拡声器の使用を制限する条例の制定も視野に入れている。

 市は6日の式典時、初めて会場と周辺でデモの音量を計測した。今後、音の大きさの分析を進める。また、参列者約4千人を対象にデモの音の式典への影響の有無や、条例も含めた音量規制の是非を問うアンケートも実施した。

 市はデモの音を「原爆死没者を慰霊し、恒久平和を祈念する式典の目的を損ないかねない」と問題視している。市民活動推進課の山根孝幸課長は「今回の式典に参列した人の声も聞き、実態を調べた上で在り方を考えたい」としている。

 市が昨年12月、郵送で実施した市民アンケートでは過去5年に式典に参列、またはテレビなどで視聴した人のうち69・1%がデモの拡声器を「条例を定めて規制するべきだ」とした。

 デモ団体は条例の設置に対して「憲法が保障する表現の自由の侵害だ」と批判。被爆者団体5団体のうち4団体も反対や慎重な姿勢を示している。

 市立大広島平和研究所の河上暁弘准教授(憲法学)は「式典参列者の声を聞き丁寧に手順を踏もうとする市の姿勢は評価できる。ただ、今回のアンケートには条例で規制した場合、表現の自由を損なう危険性があることへの言及はない。より中立性に配慮し、慎重に検討する必要がある」としている。(永山啓一)

(2019年8月8日朝刊掲載)

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