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フクシマの現状を風刺 「ニッポニアニッポン-」広島で公開中

 原発事故から8年を経た福島県の被災地の現状を、歌や踊り、アニメを交えて描いた「ニッポニアニッポン フクシマ狂詩曲(ラプソディ)」が、広島市中区の八丁座で22日まで公開中だ。故岡本喜八監督に師事し、東京で名画座を経営する才谷遼監督の2作目。奇想天外な喜劇を通じて、日本社会の笑えない現状を風刺する。

 福島県内の市役所職員で定年間際の楠穀平(隆大介)は、原発最前線の町役場に出向を命じられ、「特別震災広報課」で働くことに。終始笑顔を絶やさない助役の村井(寺田農)に案内され、復興が進まない町内の現状を目の当たりにする。楠は村井から、近く催される「祝いの宴」を円滑に進めるよう言い渡され―。

 「東日本大震災から1カ月もたたないうちに、東京では桜の下で宴会を開いていた。東北では大変な状況が続いているのに、自分たちは浮かれている。この状況を映画にしたいと思った」と才谷監督。震災の1年後から福島県に通い始め、被災者や復興状況の取材を重ねた。

 黒澤明監督作「影武者」の織田信長役で知られる隆が、真面目で家族思いの楠を好演。寺田や宝田明たちベテラン俳優、劇団員、落語家など多才なキャスト陣が「才谷ワールド」をつくり上げる。

 才谷監督は2007年から、アニメ作家を育成する「アート・アニメーションのちいさな学校」(東京都杉並区)を運営。同校の校長を務める真賀里文子やロシアの巨匠ユーリー・ノルシュテインたち、ベテランから気鋭まで11人のアニメ作品が、劇中を彩るのも見どころだ。

 東京や大阪のミニシアターで話題となっている本作。被災地の反応が気になるところだが、「意外にも、受け入れてもらった」と才谷監督。福島県いわき市で上映した際には、1人の観客から「被災者の気持ちが分かっているのか」と怒られたほかは、おおむね好評だったという。(西村文)

(2019年8月10日朝刊掲載)

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