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連載・特集

緑地帯 中村香織 夢のかたち <1>

 8月9日、「Pray For Peace 2019」が終演した。平和への祈りを込めた朗読劇とコンサート。全国3都市で公演し、観客の涙と拍手の中、幕を閉じることができた。この瞬間、小さな一歩を踏み出せたような気がして、胸が熱くなった。

 私は広島市東区出身の舞台俳優。祖父母が被爆しており、私自身は被爆3世だ。大学を卒業してから約20年、主にミュージカルの世界で俳優として生きてきた。大舞台から小劇場、ソロコンサートなどさまざまな舞台を経験してきた。2016年からは、自身で創作したオリジナルの朗読劇「アサガオの雫(しずく)」を公演している。

 「アサガオの雫」は原爆から12年たった広島に生きた3人の若者たちを描いた物語。フィクションだが、祖母の戦争体験を基に原案から考えた。「朗読劇」は普通の芝居とは違い、役者の声のみで表現する。聴き手の想像力でつくられる情景に登場人物たちが生きている。自分が想像している世界だからこそ、実際にそこにいるかのように感じてもらえる。遠い過去の話ではなく、もっと身近なこととして捉えてもらえると考え、あえて「朗読劇」を選んだ。

 小学生の頃から舞台での表現に憧れ、大きな夢を描いてきた。夢は少しずつかたちを変え、考え方も変わってきた。今は自分の表現を通し、未来を担う若者たちに「平和の尊さ」を伝え、一人一人が自分のこととして行動できるような社会にするのが私の夢だ。(なかむら・かおり 舞台俳優=東京都)

(2019年8月27日朝刊掲載)

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