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博物館専門家、シンポ 5日広島 戦争被害 継承考える

 世界の博物館の専門家が集まり、戦争犠牲者たちの追悼や記憶の継承を考えるシンポジウムが9月5日午後2時、広島市中区の原爆資料館である。国内で初めて1~7日に京都市で開かれる「国際博物館会議」(ICOM(アイコム))の関連行事となる。

 戦争やテロ事件などの被害を伝える博物館でつくる「公共に対する犯罪犠牲者追悼のための記念博物館国際委員会」(ICMEMO(アイシーメモ))が主催する。米ニューヨークの9・11記念博物館のクリフォード・チャニン副館長が基調講演。2001年の米中枢同時テロを例に、犠牲者遺族の悲しみと、事件の記憶を社会全体に継承する責務との間に立つ博物館の役割について話す。

 スペインのゲルニカ平和資料館、米ワシントンのホロコースト博物館の関係者も講演する。入場無料で、予約不要。講演は英語で、先着250人に同時通訳機を貸し出す。資料館学芸課☎082(241)4004。

コーディネーター 京都外大の東教授に聞く

記憶共有 議論深めたい

 ICMEMO役員で、シンポジウムのコーディネーターを務める京都外国語大の東自由里(じゆり)教授(国際教育学)に、議論の内容や意義を聞いた。

  ―ICMEMOとはどんな専門委員会ですか。
 戦争や差別政策、テロ事件など一般市民を標的とする「公共への犯罪」を扱う博物館のネットワークだ。特に事件が起きた現場での追悼や継承を重視し、世界で100以上の組織やキュレーター(学芸員)が加盟している。

  ―シンポではどのようなことを議論しますか。
 博物館では、犠牲者を悼むと同時に、来館者や次世代に事実を伝えなくてはいけない。どうすれば遺族の気持ちを尊重しながら、事件を人類共通の記憶にすることができるのか。原爆資料館にも共通するこの課題について議論を深めたい。

  ―被爆地での開催です。
 原爆はまさに公共への犯罪。(被爆地という)場所の力を生かしている広島への関心は高い。資料保存や展示のノウハウを広げることで、もっと世界に貢献できる。シンポ来場者には、身近な人の被爆という個人の記憶を、社会への共有という視点で捉え直してみるきっかけにしてもらいたい。(明知隼二)

(2019年8月30日朝刊掲載)

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