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「黒い雨」区域外で障害 広島地裁口頭弁論 原告側が診断書

 原爆投下後に「黒い雨」を浴びたのに被爆者健康手帳などの交付申請を却下したのは違法として、広島市や広島県安芸太田町などの男女計85人(うち8人は死亡)が市と県に却下処分の取り消しを求めた訴訟の口頭弁論が16日、広島地裁であった。原告側は、原告のほとんどが放射線の影響を否定できない障害があるとして診断書を提出。大学教授は黒い雨が原因として援護の必要性を訴えた。

 国は、爆心地から市北西部にかけての大雨地域(長さ約19キロ、幅約11キロ)を援護対象区域とし、区域内で雨を浴びた住民に第1種健康診断受診者証を交付。無料で健康診断をし、白内障など国が定める11疾病と診断された場合、被爆者健康手帳に切り替えている。原告はいずれも当時、大雨地域の外に住んでいた。

 訴訟で原告側が国の援護対象地域の拡大を求める中、裁判官が3月、原告側に診断書の提出を勧め、1人を除く84人が11疾病のいずれかを患っているとの診断書を地裁に提出した。

 この日は琉球大の矢ケ崎克馬名誉教授(物性物理学)が原告側の証人として出廷。原爆投下後のきのこ雲の写真などを基に黒い雨は国の援護対象区域より広い範囲で降ったとし「国は黒い雨の降下範囲を過小評価している。原告は十分に援護を受ける条件下にあった」と述べた。(松本輝)

(2019年10月17日朝刊掲載)

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