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尾糠さん残した被爆写真 東京の学校に遺族寄贈 「広島の惨状もっと知って」

 広島の被爆の惨状を陸軍の写真班員として撮影した故尾糠(おぬか)政美さんの遺族が、写真などの遺品62点を東京都北区の聖学院中高に寄贈した。同校は、一部を11月4日まで生徒向けに校内の図書館で展示している。文化祭に合わせ、2日と4日は一般にも入場無料で公開する。

 尾糠さんは現在の島根県邑南町出身。徴兵され、宇品海岸(広島市南区)の陸軍船舶司令部にいて被爆した。23歳だった。翌日から重傷者が運び込まれた似島などで撮影。大やけどの被災者を捉えた写真は原爆資料館(中区)で常設展示されている。

 写真の多くが敗戦後に軍の命令で焼却処分となったため、わずかに残った分を島根県川本町で営む写真館で保管。地元小学生の修学旅行の事前学習などに貸し出していたという。2011年、89歳で亡くなった。

 写真館は老朽化し、今年春に解体。川崎市に住む三男で塾経営の清司さん(57)が遺品を整理した。会員制交流サイト(SNS)を介して平和学習に積極的な同校を知り、寄贈した。

 同校では被災者の写真や、写真が載った新聞記事など24点を展示している。高校2年三浦遼馬さん(16)は「原爆の恐ろしさをどう伝えていくか本気で考えるべきだと思った」と話す。清司さんは「父も喜んでいるはず。被爆の惨状を東京の人にもっと知ってもらいたい」と願う。(河野揚)

(2019年10月28日朝刊掲載)

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