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「原爆の図」新たな画集 埼玉の丸木美術館、35年ぶり刊行

 埼玉県東松山市の「原爆の図丸木美術館」は、広島市出身の丸木位里と妻の俊が1950~82年に共同制作した15部の連作「原爆の図」を収めた新しい図録「原爆の図 丸木位里と丸木俊の芸術」を刊行した。

 同館は84年に最後の図録を発行して以来、改訂しながら版を重ねてきたが、新しく図録を作るのは35年ぶり。近年「原爆の図」は米国やドイツの展覧会に出品されるなど国内外で再評価の機運が高まっている。おととしに開館50周年を迎えた同館が「新たな視点で次の50年に生かせるような画集を」と刊行を決めた。

 横長の「原爆の図」に合わせて判型を改め、昨今の調査研究の知見を踏まえて連作以外の作品も加えた約70点を掲載。広島市現代美術館が所蔵する再制作版や、各地に残された丸木夫妻の多様な原爆表現を可能な限り収めた。

 丸木夫妻は「原爆の図」を制作しながら見る人たちとの対話を重ね、アウシュビッツや沖縄、水俣、南京などにも目を向け、その痛みと向き合ってきた。図録には戦争や公害といった社会的な暴力を描いた作品も掲載した。

 丸木美術館の岡村幸宣学芸員は「新しい図録が世に出ることで、次世代が丸木夫妻の仕事と出合い、いまの時代にふさわしい読み解きをしていただきたい」と話す。

 A4判、159ページ。同館で販売するほか、希望者には1冊2860円と送料で頒布する。同館☎0493(22)3266。(森田裕美)

(2019年11月19日朝刊掲載)

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