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被爆樹木「回診」 124本のカルテ 廿日市の栂村さん冊子完成 子ども向けに教材も

 1年前に樹木医の資格を取得した栂村(つがむら)哲男さん(71)=廿日市市=が、広島市内の被爆樹木124本の状態を調査してカルテに記入し、約200ページの冊子にまとめた。調査の成果を平和教育に生かそうと、小中学生向けの教材も作成した。

 広島市の被爆樹木リストに登録されている160本の中から、爆心地に最も近い中区基町のシダレヤナギや縮景園(中区)のイチョウ、広島高等裁判所(同)のクスノキを選び、4~7月に枝の状態、葉の色など12項目を調べた。

 カルテは樹木医が一般的に使う書式を活用。一部の木については、季節ごとに数回通って花の咲き方や実の付き方を確認し、幹の根元や葉が茂る様子を撮影した写真も添えた。「手入れが全くされず、枯れそうな木もあった」と振り返る。

 栂村さんは、愛媛県今治市出身。大学を卒業後、大手建設機械メーカーに44年間勤めた。2015年に退職後、専門学校で木の剪定(せんてい)などを学びながら資格を取得。「できることで社会の役に立ちたい」と思っていたことし1月、樹勢の衰えた被爆樹木が増えていると本紙記事で知り、調査を思い立った。

 作成した教材は「人を元気にする被爆樹アオギリ物語」「傷ついた縮景園の被爆樹物語」などと題したスライド。来年度は廿日市市内で、講師として平和学習会の開催を予定する。栂村さんは「たくましく生きる被爆樹木から、平和の大切さを学ぶとともに、環境問題にも関心をもってもらいたい」と意気込んでいる。(桑島美帆)

(2019年12月16日朝刊掲載)

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