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旧日銀広島支店復元 4度目も入札不調 広島市

 広島市が被爆建物の旧日本銀行広島支店(中区)を1950年代の復旧後の姿に復元する事業で、16、17の両日に実施した入札が不調に終わった。入札不調は昨年9月に続き4度目。建設業界の人手不足などが影響したとみられ、市は原因を分析し、工事や入札の内容の見直しを検討する。

 旧日銀広島支店は市重要文化財(重文)。復元工事で文化的な価値を高め、国重文への登録を目指す。被爆時にガラスが刺さった跡が残る壁などを保存するほか、床材の張り替えや壁の塗り直しなどを予定する。

 市は16日、文化財補修の実績がある大手ゼネコンなど16社を対象に、指名競争入札を実施した。このうち清水建設1社だけが応札したが、予定価格を超過。17日に再入札をしたが、同社は辞退した。復元工事の入札不調は2017年10月、18年3月、同9月に続き、4度目となった。

 同支店は1936年建設で、鉄筋3階地下1階延べ3214平方メートル。爆心地の南東約380メートルにある。現在は日銀から無償貸与を受けており、市民による文化芸術活動の発信拠点として利用している。

 市文化振興課は「国重文を目指す動きは遅れるが、当面の利用に影響はない。不調の原因を分析する」と話す。(明知隼二)

人手不足深刻 対応に苦慮

 4度目の不調となった旧日本銀行広島支店の復元工事。2020年東京五輪・パラリンピックの関連工事による建設業界の人手不足が影響しているとみられ、市側が抜本的な対応策を見いだしにくい状況となっている。

 市は相次ぐ入札不調を受け、完成予定を当初の19年度内から21年度内に延長。今回の入札は、業者がコストを抑えやすくするため、工事を年度ごとに分けずに一括発注とするなど内容を見直して臨んだ。

 業者側は、旧日銀広島支店を建設した清水組が前身の清水建設1社が応札した。前回18年9月の入札ではリニア中央新幹線に関わる談合事件で市から指名停止を受け、参加していなかった。しかし、予定価格との開きが大きく、落札に至らなかった。市文化振興課は「発注方法などで工夫をしたつもりだったが、結果の分析はこれから。次の入札の見通しは立っていない」と言葉少なだ。

 文化財の建造物保存の設計、指導を手掛ける文化財建造物保存技術協会(東京)は「文化財補修の入札不調は広島以外でも発生している」と指摘。東京五輪・パラリンピックの影響で職人が不足し、人件費も高くなっているという。「公共工事の場合は無理に引き上げて対応することは難しい。五輪が終われば状況も変わるのではないか」とみている。(明知隼二)

(2019年12月18日朝刊掲載)

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