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弟の死 反戦表現の原点 四国五郎企画展 元日から中区 軌跡たどる日記や手記

 戦争や原爆への怒りを、被爆地から絵や詩で表現し続けた画家の故四国五郎さん(1924~2014年)と、18歳で原爆死した弟の直登さんの絆を描く企画展が1月1日、国立広島原爆死没者追悼平和祈念館(広島市中区)で始まる。2人が残した日記や手記から、弟の死に突き動かされ反戦反核を貫いた四国さんの軌跡をたどる。(明知隼二)

 四国さんは徴兵され、旧満州(中国東北部)で敗戦を迎えた後、シベリアに抑留された。直登さんは爆心地から約1キロで被爆し、約3週間後に死亡。48年に帰国して初めて、一番仲が良く、絵描き仲間でもあった弟の死を知った。

 企画展のメインの映像作品(約30分)は、直登さんが死の直前まで書き続けた日記、四国さんが書いた追悼文や戦争画を組み合わせて制作。四国さんの「おまえの怒りや悲しみが、わたしの絵にどれだけぬりこめられるか、見ていてくれるか」などの言葉を紹介し、弟の死から、生涯を反戦反核の表現にささげる決意を固める様子を描いている。

 2人の声は女優の故木内みどりさんが演じた。木内さんは、四国さんが描いた絵本「おこりじぞう」の朗読活動を続けており、同館の依頼を快諾。しかし、11月中旬に広島での収録を終えた直後に急逝し、これが遺作となった。ナレーションは映画監督で俳優の塚本晋也さんが担当している。

 12月下旬に同館であった試写会には四国さんの長男光さん(63)も出席。光さんは「父はよくアトリエで弟の日記を読んでいた。絵は平和のために使ってほしいと言っていたので、喜んでいると思う」と話した。

 企画展は来年12月29日までで、入館無料。展示室では、タッチパネル端末で四国さんの作品約60点や手記、直登さんの日記などを閲覧できる。

(2019年12月30日朝刊掲載)

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