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[ヒロシマの空白 被爆75年] 被爆前の本通り 写真など200枚

広島県内7施設 「消えた街」保存

 広島市内有数の繁華街、中区の本通り商店街とその周辺を昭和初期から被爆前までに撮影した写真や絵はがきが、原爆資料館など広島県内7施設に計200枚以上あることが30日分かった。原爆で壊滅した市中心部の姿と原爆被害を知る上で、重要な資料。市民からの画像データ寄贈などにより、最近は所蔵総数が増えている。

 中国新聞が各施設から回答を得るなどして確認した。原爆資料館が最も多い約140枚を所蔵。うち約130枚は2014年、旧播磨屋町(現中区本通)で理髪店を営んでいた故鈴木六郎さん撮影の画像データとして遺族から提供された。インターネットのオークションで得た写真を市民から託されたケースもある。

 次いで、市公文書館(同区)が約30枚、市文化振興課は21枚を所蔵。ほかに広島県立文書館(同区)、市立中央図書館(同区)、広島大文書館(東広島市)にそれぞれ1~5枚あった。

 理髪店の写真には、家族の日常生活の様子とともに、本通りの街角が写り込んでいる。原爆資料館学芸課は「広島城などの『名所』に比べると、市民が店舗前で写真を撮る機会は少ないため貴重だ」と説明。個人宅で私蔵されている写真はさらにあるとみている。

 市中心部を東西に延びる本通りは爆心地からわずか数十~700メートル。現在、広島本通商店街振興組合(加盟165店)が持っている被爆前の商店街の写真は、下村時計店の外観など計4枚にとどまる。分散して所蔵されている写真を横断的に閲覧できるようにするなど、原爆に消し去られた街並みを知るための活用策が求められる。(山下美波)

(2019年12月31日朝刊掲載)

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