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訪問延期 「民間交流続ける」 毒ガス被害者支援の「モースト」 現地と電話 混乱痛感

 イランの友人からの電話に現地の混乱を痛感した。イラン・イラク戦争で使われた毒ガスの被害者支援を続けているNPO法人モースト(広島市東区)理事長の津谷静子さん(64)は、米国とイランの対立激化に心を痛める。14日から首都テヘランを訪れる予定だったが、8日、延期を余儀なくされた。「孤立するイラン市民を支えたい。その手を離さず、民間交流を続ける」と誓う。

 津谷さんは今回、6日間の日程でテヘランを訪問する計画だった。同法人の活動を紹介する書籍が現地で出版され、記念式典に招かれたためだ。しかし、イランが報復攻撃をしたこの日、受け入れ団体から電話があった。「今後どうなるか分からない。延期しましょう」。その口調に切迫感を感じ取った。

 同法人は2004年、毒ガス被害者の支援活動を開始。現地に出向いたり、被害者を広島市の平和記念式典に招待したりして行き来するうち、イランの人々の心が変わる様を目の当たりにしてきた。「米国への敵対心をむき出しにしていた人が、『仕返しより平和のために力を使いたい』と話し始める。人の情が心を動かし、平和が築けるのだと思う」。草の根交流の力を信じる。

 現地の友人からの連絡には、日々の生活への疲れがにじむ。米国の経済制裁の下、食料品やガソリンが高騰。薬も手に入らないという。  「多くの市民は戦争など望んでいないはず。イランの人々の不安に心を寄せ、日本の私たちも『平和な世界に向かおう』と声を上げたい」。情勢が落ち着き次第、約束を果たしに現地を訪れるつもりだ。(田中美千子)

(2020年1月9日朝刊掲載)

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