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被服支廠保存 求める声 広島で要望書提出や署名

 広島市内最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」(南区)で「2棟解体、1棟の外観保存」の原案を示した広島県に対し、県被団協(坪井直理事長)と県原水禁は8日、3棟全ての保存を求める要望書を出した。市民団体は中区の平和記念公園で、解体に反対する署名活動をした。

 県被団協は要望書で「被爆者は体の続く限り、原爆の悲惨さや恐ろしさを語るつもりだが、ずっとは続けられない」と主張。被服支廠は原爆の影響を当時のまま伝えており、失われると再現は不可能と訴える。

 県原水禁は、県が持つ3棟全ての保存と利活用の早急な検討を訴える。建物の建築学的な価値や、軍需工場だった歴史を含めて情報を発信するよう求める。

 両団体の役員たち4人が県庁で、県財産管理課の足立太輝課長に渡した。県被団協の箕牧(みまき)智之理事長代行は「あちこちから反対の声が上がっている。議論の時間がほしい」と強調。県原水禁の金子哲夫代表委員は「被爆から75年の節目に解体が決まるのは受け入れ難い」と力を込めた。

 市民団体「旧被服支廠の保全を願う懇談会」の会員8人は、平和記念公園で署名への協力を呼び掛けた。長野県飯田市の歌唱講師、嶋夏緒理さん(32)は「実際の建物が訴える力は違う。保存し、多くの人に見てもらうべきだ」と応じた。

 署名は昨年12月下旬から郵送でも募っており、近く県に出す。内藤達郎会長代行(78)は「今の形を残しながら安全を確保する手段を再考してほしい」と説く。(畑山尚史、木原由維)

(2020年1月9日朝刊掲載)

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