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社説・コラム

『記者縦横』 「被爆樹木」紙芝居 NYへ

■ヒロシマ平和メディアセンター 新山京子

 被爆体験を受け継ぐ中高生の真っすぐな思いと、映像表現の持つ力が、見る者の心に余韻を残す。中国新聞ジュニアライター8人が「被爆樹木」をテーマに紙芝居を制作。それを米国のアーティストが「動く紙芝居」の映像作品にした。

 紙芝居の主人公は、爆心地から2・1キロの安楽寺(広島市東区)の境内に立つ大きなイチョウだ。ジュニアライターは、前住職で被爆者の登世岡浩治さん(90)を訪ね、証言に耳を傾けた。12歳だった弟の純治さんを原爆に奪われ、悲しみに暮れた一家が慈しんだのが、熱線と爆風にさらされながら生き延びた被爆樹木だったという。

 登世岡さんの平和への願いを、皆が確かに受け止めた。被爆直後の街並み、焼け野原で弟を捜す一家の姿―。イチョウが語るストーリーを書いた。きのこ雲やイチョウを描いたり、拾い集めた葉、黄と緑の折り紙を貼り付けたりした。

 筆を握る8人の手が絶え間なく動き、白い画用紙が絵で埋まっていく経過を、真上から動画撮影。広島で平和イベントを開いている米国NPO法人のピーター・ビルさんがこま送りのような映像に編集した。

 米ニューヨークの国連本部で今春開かれる核拡散防止条約(NPT)再検討会議に合わせ、現地で上映予定だ。会議の行方は厳しそうだが、一人でも多くの関係者の良心に届いてほしい。5分35秒の作品はヒロシマ平和メディアセンターのウェブサイトで見ることができる。

(2020年1月24日朝刊掲載)

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