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社説・コラム

天風録 『人類滅亡まで「100秒」』

 これも地球温暖化の仕業なのだろうか。大寒の候らしくないどころか、きのう広島市内はすっかり春めいた1日に。このまま真新しいマフラーや手袋を置き去りにして冬は過ぎ去ってしまうのかも▲ところが世のニュースは背筋を凍らせるものばかりが目立つ。新型肺炎という寒風が大陸から吹き付けてくる。「終末時計」の針は20秒進み、人類滅亡までの残り時間はとうとう「100秒」に。史上最も短くなった▲核兵器保有国の傍若無人ぶりに加え、宇宙やサイバー空間にも舞台を広げた軍拡競争が続く。気候変動への対策も不十分で、何より各国の指導者から危機感がうかがえない▲そもそも終末時計は、広島や長崎の原爆被害に胸を痛めた米国の科学者たちが核問題専門誌に掲載してきた。米中枢同時テロを経て世界が不穏な空気に包まれた2002年の「7分」と比べても、今の深刻さが分かる▲ひとたび核戦争が起きれば、大量のちりが大空をぐるりと覆い、太陽を遮って地球は冷え込む。そうした「核の冬」理論の真偽など、誰も確かめたくはあるまい。それよりも温暖化対策でもっと国際協調を。冬を冬らしくしないと、春は待ち遠しくならないのだから。

(2020年1月27日朝刊掲載)

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