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社説・コラム

全軍縮大使 高見沢氏インタビュー 保有国との妥協点探り貢献を

 約3年にわたりスイス・ジュネーブの軍縮会議日本政府代表部で軍縮大使を務めた高見沢将林氏に、在任中の核軍縮分野での日本外交の成果と課題、今春の核拡散防止条約(NPT)再検討会議で日本政府が果たすべき役割などを聞いた。(明知隼二)

  ―日本の核軍縮外交の成果をどう見ますか。
 国連総会に毎年提案する核兵器廃絶決議案など、対話の努力を重ねてきた。2017年に外務省が設けた「賢人会議」は、核兵器保有国と非保有国の有識者で核軍縮の方策を議論した。核政策の透明性向上など、まとめた提言はNPTの場にも示し評価されている。実際の政策に生かすには、今後は各国政府関係者の参加が課題となるだろう。

  ―昨年提出の決議案は、核兵器の非人道性の表現が弱まったと評されました。
 再検討会議を見据え、どのような表現、論点なら各国が妥協できるのかを探る意図だった。実際、透明性や軍縮教育では一致できても、保有国の核軍縮の進み具合には不満が強く、溝が深い現状が分かった。

  ―核兵器禁止条約への姿勢も含め、被爆者たちからは「保有国寄りだ」との厳しい見方もあります。
 確かに決議案は保有国、非保有国の双方から評判が悪かったと認めざるを得ない。ただ、日本は非保有国による「軍縮・不拡散イニシアチブ(NPDI)」など多様な有志国グループに参加している。米国と近いからこそ、そこで米国とのギャップを伝え、妥協点を示す役割もある。

  ―再検討会議で日本は役割を果たせますか。
 やはり有志国で、妥協できる具体的な取り組みや表現を探る貢献はできる。米国がそれでも乗れないと言えば、NPTの信頼に関わると説得するべきだ。米国の核抑止に頼るから何も言えないということはない。

  ―被爆者や若者も現地で廃絶を訴える見通しです。
 被爆の実態を伝え、保有国に核軍縮の進展を求めてほしい。より良い合意に向け、政治を後押しする被爆地の発信に期待したい。

(2020年1月28日朝刊掲載)

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