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被服支廠 「議論深める」 解体先送り 広島知事、市長に説明

 広島県の湯崎英彦知事は7日、広島市内最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」(南区)で安全対策の原案として打ち出した「2棟解体、1棟の外観保存」について、2020年度としてきた着手を先送りすると表明した。県庁での松井一実市長との会談で「引き続き議論を深める」と説明した。

 湯崎知事は会談で、原案を示した昨年12月以降、多くの意見が寄せられたと報告。県議会の3会派からも「引き続き議論する時間が必要だ」と要請を受けたとして「県としては引き続き議論を深めることとした。市にも引き続き協力をお願いしたい」と述べた。

 松井市長は「県民、市民が納得できるような議論をしてもらえる」と、先送りの決断を歓迎した。その上で、議論で導かれる結論に「市としても可能な限り協力していく」と約束した。市による財政支援の可否については言及しなかった。

 湯崎知事は会談後、先送りを踏まえた20年度当初予算案の内容については「調整しているところだ」と明言を避けた。県はすでに、古くなった建物の壁を補強し、国や広島市と活用策を探るための2600万円の計上にとどめ、解体に向けた設計費用などは盛り込まない方針を固めている。

 松井市長は会談で、被爆75年の年に東京五輪・パラリンピックが開催されるとして「スポーツを通じた平和や友好のメッセージを世界に広く発信したい」と意欲を見せた。湯崎知事は会談後「参加する選手や政治家、リーダーに広島訪問を働き掛けたい。市と連携して進めたい」と呼応した。(村田拓也)

(2020年2月8日朝刊掲載)

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