×

ニュース

雲南市遺族会 戦争問う75年史発刊 図書館や小中校に寄贈 111人が手記

届いた召集令状/父の戦死…

 島根県雲南市遺族会が、2020年の戦後75年に合わせ、戦地に赴く姿や肉親を失った家族の生活体験をつづった手記などをまとめた「戦後七十五年史」を編んだ。戦争の残酷さ、平和の大切さを後世に語り継ごうと会員111人が寄稿した。(高橋良輔)

 七十五年史はB5判、220ページ。手記のほか、04年の合併による同市誕生を機に発足した同会の15年間の活動記録や、日清戦争から太平洋戦争までの戦争の歴史などを6章にまとめた。

 同会の難波幸夫会長(79)は「今では考えられないことが起きていたのが一目で分かる」と話す。召集令状が届いて家族との別れを迎えた場面、戦地から届いた手紙の文面、父親の戦死を告げられ悲嘆に暮れた日々などが記されている。

 難波会長自身も2歳の時に父親が戦地へ向かい、戻らなかった。昨年亡くなった母親から当時の様子を聞き取り、今回寄稿した。

 同会によると、雲南市の戦没者数は2354人。戦争を知らない世代が増える中、最愛の人を亡くした思いや戦争の本質を伝えようと、17年8月から会員に手記の寄稿を呼び掛けて編さん作業を開始。今年1月に完成し、500部作った。

 1月22日に同市大東町の大東交流センターで発刊式を催し、会員たち約80人で祝った。難波会長は「発刊で終わりではなく、活用して地元の子どもたちを中心に平和の大切さを学んでほしい」と期待する。市内の図書館や小中学校に100部を寄贈。同会では証言者を育てる計画も立てている。

(2020年2月23日朝刊掲載)

年別アーカイブ