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被服支廠 記憶をつなぐ 広島の市民団体が証言集 1年かけ1日刊行

 広島市内最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」(南区)の歴史を広く知ってもらおうと、市民団体「旧被服支廠の保全を願う懇談会」(中西巌代表)が被爆者たちの証言集を3月1日に刊行する。独自に聞き取ったり、過去の手記集から再掲したりし、遺族の保管していた貴重な写真も集めて約1年がかりでまとめた。(明知隼二)

 証言集「赤レンガ倉庫は語り継ぐ」はA4判146ページ。被服支廠で被爆した人や、救護に当たった人たちの証言など約40編を載せる。「倉庫の白い壁がハエで真っ黒になりました」「やけどで赤肌になり、洋服を着ていた人もボロボロになってまるで茹蛸(ゆでだこ)のようでした」など惨状を伝える。詩人の峠三吉が当時の状況をつづった「倉庫の記録」や日記なども紹介している。

 1905年に陸軍被服支廠広島派出所として設けられ、07年に支廠に昇格。軍服や軍靴の生産や修理を担う施設が並んだ。証言集には、当時の縫製工場内で女性たちがミシンに向かう姿や、敷地内の保育所の様子を収めた写真など、職員の遺族たちから寄せられた貴重な資料も盛り込んだ。

 懇談会は2014年に結成し、現存する倉庫4棟の保全の機運を高める講演会などを開いてきた。県が昨年12月、県所有の3棟について「2棟解体、1棟外観保存」の原案を示して以降は、県への要望や署名活動を重ねる。内藤達郎事務局長(78)は「会の活動の集大成でもある。被服支廠の歴史を知るために活用してほしい」としている。500部印刷し、図書館や学校などに配る方針。

(2020年2月26日朝刊掲載)

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