×

ニュース

被爆体験継承にも影 資料館講話 キャンセル・延期32件 新型肺炎 「早く終息して」

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、一時休館する原爆資料館(広島市中区)では、同館で受け付けている被爆体験講話のキャンセルや延期が相次いでいた。26日時点で、5月までの予約分を含めて計32件。証言を担う被爆者は「直接顔を合わせて話すことが大切だが、仕方ない」と複雑な表情を見せる。感染拡大は被爆の記憶の継承にも影響を及ぼしている。(明知隼二)

 32件のうち延期は3件。予約していたのは個人のグループから修学旅行の団体まで幅広い。5月から修学旅行シーズンに入るため、感染が終息しなければ影響はさらに広がる可能性もある。

 証言者の小倉桂子さん(82)=中区=は、米国などから訪れる予定だった大学生たちへの講話が取りやめになった。「インターネット中継や録画ではなく、生きた被爆者の顔を見て話すからこそ聞く人も心が動くのに」と残念がる。

 一方、被爆者も感染の不安を抱えながらの活動になる。「マスクを着けて証言をするわけにもいかない。話の後には熱心な人ほど握手やハグを求めてくれる」と小倉さん。自身が代表を務めるガイドボランティアのグループでも対策の必要性を感じている。「心置きなく活動できるように早く終息してほしい」と願う。

 資料館は29日から3月15日まで臨時休館する。この期間中、キャンセル分を除き、実施予定だった被爆体験講話は同館主催分だけで22件あった。主に県外からの小中学生などの団体で、順次中止の連絡をしている。

 市が26日に決定した「手が届く距離で多くの人が会話や食事をするイベントは中止・延期する」との方針に沿い、高齢の被爆者の感染リスクにも配慮した。資料館の滝川卓男館長は「全国的に命を守るための対応が広がっている。仕方ない」と話した。

(2020年2月28日朝刊掲載)

年別アーカイブ