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連載・特集

響いた心 素直な言葉で 崇徳高新聞部 ローマ教皇広島訪問で特集

宗教超えて「対話から」

 ローマ教皇フランシスコが昨年11月に広島を訪問して3カ月余り。核兵器廃絶を訴えた教皇のメッセージは、宗教の違いを超えて若者の心に届いたようだ。浄土真宗本願寺派の宗門校、崇徳高(広島市西区)の新聞部は、1月に発行した校内新聞で教皇訪問を振り返った。互いを認め合い、許し合う心はどの宗教も共通―。大きな学びを真っすぐな言葉で伝えた。(久行大輝)

 校内新聞はA3判12ページ。そのうち3ページを割いて特集した。「『武器を手にしたまま、愛することはできません』という教皇の言葉が心に残った。世界では核を保有しそれを抑止力とする国家が目立つように思う」。2年舛井亮太さん(16)はコラム「記者の目」でこう記した。

法句経の一節

 教皇の言葉に触れたとき、舛井さんは学校で学んだ仏典「法句経」の一節が浮かんだという。「怨(うら)みに報いるに怨みを以(もっ)てしたならば ついに怨みの息(や)むことがない」。キリスト教も仏教も同じことを説いていると思った。力をもって力に対抗する態度では平和を築けない。核兵器廃絶とはつまり、わだかまりを越えて共に行動することなんだな―。

 新聞部の部員は約50人。教皇が広島を訪問した当日は10人が取材に当たった。中区の平和記念公園であった「平和のための集い」では、教皇と本願寺派の大谷光淳門主が言葉を交わす場面もあった。仏教や神道などの指導者の姿が目立ったことも印象的だったという。

平和と愛発信

 編集長を務めた2年井上朝斐(あさひ)さん(17)は「平和と愛を発信する姿はどの宗教も同じ。宗教、宗派の違いによる紛争が世界で続くが、対話から始めて相互理解、協力へとつなげることが必要」と語る。「教皇が来てよかったね、で終わらせてはいけない。これからどう動くのか、私たちが試されている」

 顧問の花岡健吾教諭(46)は「まだ拙い部分もあるが、駆け回って取材し、自分なりに考えた言葉で書いた記事や見出しになっている」と評価。「異なる宗教の学びから、立場の違いを超えて他者を認める大切さを学んでくれたようだ」と喜ぶ。他人を思う気持ち、敵も味方も関係ない命の重みを感じたことに生徒の成長を見いだした。

 高校生で触れた宗教は、これからも生きる支えであり続ける。教皇を望遠レンズで追った3年篠原正樹さん(18)は「仏教の授業や先生の法話を通して宗教について考え、自分を見つめ直す機会になった。教わったことは、人生で迷った時にきっと助けになるはず」と笑顔を見せた。

(2020年3月9日朝刊掲載)

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