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東日本大震災 県内の避難世帯調査 今後の拠点「未定」34%

 東日本大震災で県内に避難した人でつくる「ひろしま避難者の会アスチカ」が会員世帯を対象にしたアンケートで、今後の生活拠点を決めていない世帯が3割強に上ることが分かった。大震災発生から11日で9年。今も将来像を描けない実態が浮かぶ。新型コロナウイルスの感染拡大で多くの人がマスクを着けているのを見て、被災直後を思い出して動揺する会員もいるという。

 会員103世帯のうち44・7%の46世帯が答えた。生活拠点について「今住んでいる自治体に定住」と答えたのは39・1%で最多。県内で仕事や住まいを得て生活基盤を固めた人が多い。ただ前年から3・5ポイント低下し、4年ぶりに4割を下回った。

 一方、「決めていない」と回答したのは34・8%で、ほぼ前年並みだった。避難元に戻りたいが「決めていない」とした世帯からは「年齢的に転職が難しい」「汚染が怖い」などの声があり、迷いを深める姿がうかがえる。定住を希望する世帯にも避難元で暮らす老齢の親の暮らしを案ずる声もあった。

 つらいこと(複数回答)では、半数が「避難元の親・親戚・友人になかなか会えないこと」を挙げた。「震災や原発事故が世間から忘れられていると感じる」と記憶の風化への懸念も目立った。

 新型コロナウイルスの感染が広がる中、つらい記憶を呼び覚ます人もいた。粉じんを防ぐためマスクを着けていた当時を思い出したり、被災直後と同様に誤った情報が出回る現状に胸を痛めたりしているという。

 アスチカは年1回、会員アンケートを実施。広島市西区三篠町に拠点施設「たねまく広場」を開き、会員を支援している。三浦綾代表(47)は「年月を重ねたからこそ浮上する課題があり、心の浮き沈みもある。会を続け、一人一人に寄り添いたい」と話している。(奥田美奈子)

(2020年3月11日朝刊掲載)

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