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社説・コラム

[NIE これ読んで 担当記者から] 原爆資料館 浸水対策を

■報道センター社会担当・明知隼二

備え大切 収蔵品守ろう

 全国で豪雨や台風による水害が相次ぐ中、川に挟まれたデルタ地帯にある原爆資料館(広島市中区)の浸水対策が課題となっている。他県では、地下に水が流れ込み、博物館の収蔵品が壊滅的な被害を受けた事例もある。「無言の証人」である被爆資料を後世に残すため、有識者からは早急な対応を求める意見が出始めた。(3月20日付朝刊)

 原爆資料館を訪れると、原爆で命を奪われた人が着ていた衣服、子どもが使っていた三輪車など、多くの展示があります。衣類に残る焼け焦げの跡を見ると、着ていた人がどれほどひどいやけどを負ったのか、想像せずにはいられません。

 資料館には、原爆という兵器の恐ろしさや、家族を亡くした悲しみを伝える被爆資料が約2万点もあります。そのほとんどは地下の収蔵庫に保管されています。これらの資料を相次ぐ自然災害からどう守るかが問題となっています。

 広島市は2014年8月の広島土砂災害、18年7月の西日本豪雨で大きな被害を受けました。どちらも、これまででは考えられないほどの雨が降りました。2本の川に挟まれた資料館は大丈夫なのでしょうか。

 今のところ、資料館の建物にも地下の収蔵庫にも、水が入り込むのを防ぐ仕掛けはありません。国は川から水があふれないように川岸を高くする工事を広島市内のあちこちでしていますが、資料館に近い場所は何年も先になりそうです。水害に襲われてしまえば、今は守りようがないのです。

 被爆資料は水害で傷んでしまうと修復が難しいものばかりです。原爆の被害を伝え続けるためには、水害が起こる前の備えが大切です。建物を囲む壁を作ったり、いざというときに資料を運ぶ手順を考えたり。どんな備えができるか、皆さんも考えてみてください。

(2020年3月22日朝刊掲載)

原爆資料館 浸水対策を 地下に大半収蔵 デルタ地帯の課題に

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