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「地道に活動継続」「再開へ議論を」 NPT会議延期決定で広島の被爆者・首長

 核拡散防止条約(NPT)の加盟国は新型コロナウイルスの世界的流行を受け、4~5月に米ニューヨークの国連本部で予定していた5年に1度のNPT再検討会議を「状況が許すようになるまで」延期すると決定した。広島の被爆者たちは28日、落胆を浮かべた。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で代表団の派遣を見合わせる動きが出ており、冷静な受け止めもある。開催は「来年4月までに」とされており、仕切り直しへ気持ちを新たにした。

 広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之理事長代行(78)は「ニューヨークでの被爆証言へ準備してきたので残念。延期後も、必ず現地で核兵器廃絶を訴えたい」と切り替えた。日本被団協(東京)は今月中旬、代表団の派遣中止を決めており「世界の感染状況からすると、今更という印象はある」とも語った。

 今回の再検討会議は、米国とロシアなど加盟国間の対立を背景に厳しい展開が予想されていた。核兵器保有国と非保有国の論争の焦点の一つとなっている核兵器禁止条約は、2017年7月に国連で採択され、これまでに36カ国・地域が批准。推進国や非政府組織(NGO)は、年内発効を目指し活動を強めている。

 もう一つの県被団協(佐久間邦彦理事長)の大越和郎事務局長(79)は「延期中に禁止条約が発効すれば、再検討会議は全く新しい局面に入る。地道に活動を継続し、条約発効に向けた市民の世論を盛り上げていきたい」と力を込めた。

 広島県の湯崎英彦知事は「やむを得ない判断だが、被爆75年を迎えて1日も早い核兵器廃絶を願う被爆者の思いを届ける機会が延期されたのは非常に残念」と受け止めた。感染拡大が早期に収まるよう願うとともに、各国政府に「会議の再開へ議論を継続し、核軍縮で具体的な成果が得られるよう努力を」と注文した。(明知隼二)

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