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被爆証言 中止・延期500件超 新型コロナ 修学旅行減が影響 休止団体も

 新型コロナウイルスの感染拡大が、被爆地の広島市の証言活動に影を落としている。原爆資料館(中区)では、被爆証言などの予約のキャンセルや延期が500件を突破。広島県被団協(坪井直理事長)の証言も次々と中止になっている。とりわけ春の修学旅行の手控えが影響し、関係者は被爆の実態を伝える機会の減少に気をもむ。一方で、インターネットを使って活動を補う動きも出始めた。(明知隼二)

 例年なら4~6月、修学旅行生たちが多く詰めかける原爆資料館。ことしは新型コロナで修学旅行を見直す動きが各地で相次ぎ、3月27日現在で被爆体験の講話355件▽証言を引き継ぐ伝承者の講話167件▽ピースボランティアの案内42件▽平和学習講座3件―の延期や中止が決まった。

 資料館自体も2月29日から臨時休館に入り、当面は4月12日まで継続する。資料館啓発課は「証言は聴いてほしいが、大勢が屋内に集まる場となる。再開後、すぐに講話を始められるかどうか、判断が難しい」と明かす。修学旅行が秋の行楽シーズンに延期された場合、証言者や会場の確保が難しくなる懸念も深める。

 県被団協の「被爆を語り継ぐ会」も、修学旅行生向けの証言が次々と中止に。5月は依頼32件のうち22件がなくなった。前田耕一郎事務局長(71)は「この状況ではやむを得ない。それでも広島で話を聴きたいとの要望があれば、感染を防ぐ対策をした上で、できるだけ応えたい」と話す。

 平和記念公園(中区)でのガイド活動にも影響が出ている。被爆者の三登浩成さん(74)は4~6月、仲間とともに米国の若者2千人以上を案内する予定だったが、4、5月分は中止に。「この様子では6月も厳しそう」とみる。英語で案内する「平和のためのヒロシマ通訳者グループ」(小倉桂子代表)は3月に続き、4月の活動休止を決めた。

 近くのカフェ「ハチドリ舎」は、月3回開く被爆者と観光客の交流を、入店時のアルコール消毒やマスク着用を徹底した上で続ける。店主の安彦恵里香さん(41)は「必要としてくれる方がいる。感染の広がりを見て、中止を含めて柔軟に判断したい」と説明する。

 核兵器禁止条約の発効を目指す「ヒバクシャ国際署名」の事務局(東京)は3月末、被爆者と若者をネットで結ぶ「オンライン被爆証言会」を初めて開いた。全国の小学生から大学生まで約50人が参加し、質疑も活発だった。キャンペーンリーダーの林田光弘さん(27)=川崎市=は「感染の収束が見通せない中、できるだけ続ける」と語った。

(2020年4月2日朝刊掲載)

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