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連載・特集

『生きて』 元自民党政調会長 亀井静香さん(1936年~) <5> 東大時代

貧乏生活 旅行やバイト

  ≪1956年、東京大に入学し、学生寮「駒場寮」で暮らし始める≫

 6人部屋でごみ箱のように乱雑だったなあ。当時の寮生は個性の強いやつばかりでね。後にJリーグチェアマンに就いた鈴木昌や作家になる柳田邦男とか。俺の方はね、寮歌を編さんする向陵会というサークルに入った。小学校時代から音楽の成績は悪かったんだけど、下手の横好きというやつさ。今でもサークル仲間と同窓会を続けている。思い出話に花咲くのはやっぱり温泉旅行だな。

 ≪向陵会の仲間5人で山形県の温海温泉へ旅に出る≫

 貧乏学生だから、番頭と交渉して宿代を値切りまくった。なのに「芸者を1人あてがってほしい」と注文したわけ。ずうずうしいよなあ。夜はマージャン。芸者さんの独占を賭けてな。結果、俺ら負けた4人は悔しくて仕方なかった。北海道にも一緒に行ったなあ。仲間との旅も楽しかったけど、俺は夏と冬の長期休みは山陰へ、一人旅もしていたんだ。

 ≪山陰本線に揺られ、向かった先は松江市の玉造温泉だった≫

 愛しの君がいてね。名前は、みすゞ。日本髪を結ってね、かわいい芸者さんだった。川端康成の小説「伊豆の踊子」みたいなロマンスだよ。けど俺が大学を出て社会に出ると、ぷつんと縁が切れた。俺は忘れられなくて、鳥取勤務になったり国会議員になって山陰出張があったりした時は人づてに探してもらったんだけど見つからなかった。元気かな。この記事を見たら、みすゞ、連絡くれよ。

 ≪苦学生ばかりの駒場寮。例に漏れずアルバイトに明け暮れる≫

 家庭教師を三つ掛け持ちし、夜は五反田の東洋現像所(現イマジカ)でガードマン。銀座でキャバレーのボーイもしたよ。ただ俺は二枚目じゃないから、店の裏でおしぼりを巻いたり、掃除をしたり。アルバイトでためた金の中から、おやじに背広を買った。せめてもの親孝行かな。

 勉強の方は相変わらず気が入らない。東大文科一類は学生の多くが法律専門の道に進むんだけど、俺は経済を選んだ。ただ授業はほとんど出ず、テストもちんぷんかんぷん。成績はオール「可」だった。それでも寮生活で、いろんな出来事があって俺は有名人になった。

(2020年2月8日朝刊掲載)

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『生きて』 元自民党政調会長 亀井静香さん(1936年~) <6> 核兵器反対運動

『生きて』 元自民党政調会長 亀井静香さん(1936年~) <7> 警察キャリア官僚

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『生きて』 元自民党政調会長 亀井静香さん(1936年~) <18> 政界引退

『生きて』 元自民党政調会長 亀井静香さん(1936年~) <19> KK戦争

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