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連載・特集

『生きて』 元自民党政調会長 亀井静香さん(1936年~) <8> 大立ち回りの捜査2課長

県や市の不正 次々摘発

  ≪鹿児島県警の監察室長から鳥取県警の警務部長を経て1969年、埼玉県警刑事部の捜査2課長に≫

 楽しかったなあ、あの頃。捜査2課は知能犯や選挙違反などが担当でね。俺の時代は県や市の不正をばんばん摘発した。汚職というのは、いつの世も存在する。それを捜査機関が掘るかどうかが問題なんだ。

 思い出深いのは、あるスポーツ団体の不正捜査かな。関係者が世界大会から帰国する羽田空港に護送車を送って、次々に放り込んだ。当時、警察庁長官賞の多くを、埼玉県警の捜査2課が独占したんだ。優秀な部下に恵まれた。でも、大ピンチも迎えるんだ。パトカーで運ばれ、留置場に入れられたんだから。

 ≪衆院選が間近に迫った69年12月。繁華街の一角で事件は起きる≫

 捜査2課の部下と小料理屋で一杯引っ掛けていたら、「キャー」という女性の悲鳴が外から聞こえた。先に表を見に行った部下は倒れ込み、傍らにはチンピラ風の4人組。俺は東京大時代に合気道をやっていたから応戦していると、パトカーが来てあえなく御用。近場にいた新聞記者にも見られた。いかんと思ったね。

 これには後日談がある。当時の警察担当記者たちが20年ほど後、国会議員になっていた俺との飲み会を開いてくれた。乱闘を目撃した記者が言うんだ。「あの時、記事にしていたら、亀井さんはどうなっていましたかね」と。俺は、そいつの新聞社の社長に電話したよ。「命の恩人だ。偉くしてやってくれ」ってさ。

 ≪71年秋、警察庁警備局の公安警備担当に転属する≫

 実は、警視庁の刑事畑への異動がほぼ決まっていたんだが、ある大物政治家につながる収賄事件の捜査で「虎の尾」を踏んで内定が取り消しになったみたいなんだ。代わりに配属されたのが、世の中を震撼(しんかん)させていた極左活動の対策部門だ。成田空港闘争や、あさま山荘事件(72年)の捜査も最前線で関わった。

 面白かったのは、ある組織の拠点を隙間からのぞいていた時だ。布団で横たわっている女が、男に「誰かに見られている気がする」って言うんだ。肝を冷やしたなあ。そうこうして警察人生15年。ある思いが芽生えてきた。世の中を変えるには政治じゃないかと。

(2020年2月13日朝刊掲載)

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