『生きて』 元自民党政調会長 亀井静香さん(1936年~) <17> 郵政解散
20年4月3日
刺客ホリエモンと今は
≪2003年の自民党総裁選で敗れた亀井さんは、小泉純一郎首相が旗を振る郵政民営化に反対して05年に離党。国民新党を立ち上げる≫
小泉改革とか劇場政治とか騒がれたが、俺に言わせれば雄の珍獣が見せ物のサーカスだったな。振付師は経済学者の竹中平蔵だ。「古い物は淘汰(とうた)されるべきだ」と言いながら、実際は米国迎合だ。郵便局が当時国民から預かっていた資産は300兆円以上。日本進出を目指す米資本にとってはやっかいな存在で、民営化で経済主権を奪おうとしたんだ。
俺が離党してまで郵便局を守ろうとしたことに、地元支援者は驚いたようだ。元々郵政族じゃないし、特定郵便局長らが支援してきたのは自民党主流派で、俺は距離を置かれていたんだ。国民のため国益を思って行動したが、純ちゃんに抵抗勢力に仕立て上げられた。
≪自民党が広島6区に送った刺客は堀江貴文氏。IT企業の経営者で時代の寵児(ちょうじ)だった≫
「ホリエモン」がやって来たとマスコミは大騒ぎしたが、俺は全く怖くなかった。最初立候補した衆院選の厳しさと比べると天地の差だよ。
≪土砂降りの雨の中、亀井さんは傘も差さず熱弁を振るった≫
あんなの名場面じゃねえよ。俺は昔から演説中は傘を差さないようにしているんだ。だって、聞いてくれる人の中には傘を持っていない人もいるでしょ。有権者と同じ立場、同じ目線に立ってこそ、政治を語れるんじゃねえか。
≪亀井さんが連続10選を飾った一方、堀江氏は後に証券取引法違反容疑などで逮捕され、懲役2年6か月の実刑判決が11年に確定する≫
選挙中は一言も交わさなかったが、徒手空拳で挑んできた勇気は認める。刑務所へ面会に行こうと思ったが、残念ながら実現しなかった。ようやく会えたのは昨年のことだ。
≪19年6月、民放のテレビ番組で堀江氏との対談が実現する≫
再び選挙に出るよう勧めた。「政界を乗っ取るなら今がチャンスだ。あなたが立てば嵐を起こせる」と。ホリエモンは「勘弁してください」と笑っていた。聞けば宇宙観光のロケット開発計画を進めているというから、俺も出資した。夢を追う若者って、いいじゃないか。
(2020年2月28日朝刊掲載)
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