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連載・特集

『生きて』 元自民党政調会長 亀井静香さん(1936年~) <18> 政界引退

弱者の側に立つ政治を

 ≪2009年の衆院選で自民党が大敗。民主党と共闘した国民新党代表の亀井さんは、鳩山由紀夫政権で郵政改革・金融担当相に就く≫

 政治家人生で一番誇りたいのは、金融担当相としてモラトリアム法(中小企業金融円滑化法)を作ったことだ。資金繰りに困っている中小企業が返済の猶予を申し込んだ場合、金融機関は応じるように努力する義務があると定めた。案の定、銀行業界のお偉いさんが大臣執務室に怒鳴り込んできた。「貸した金を返してもらうのは当たり前だ」って。

 俺は一歩も引かない。「貸し剝がしとか貸し渋りとか、客をいじめてつぶしていいのか。銀行の本分を忘れるな」。思い浮かべたのは、資金繰りに苦しみ自殺した知人の中小企業経営者3人のことだ。真面目な社長や従業員が不幸な道を選ぶような社会など、あってはならんのだよ。

 ≪東日本大震災などで足元がぐらつき始めた民主党政権。12年3月、亀井さんは連立離脱を決意する≫

 野田佳彦内閣の時だな。俺が反対する環太平洋連携協定(TPP)の交渉入りや増税を強引に進めようとしたからだ。記者会見で連立離脱を表明したが、幹事長の下地幹郎らが政権に残りたがり、代表の俺を解任したんだ。裏切られた、クーデターだと思ったよ。ただね、今はもう許している。下地は当時、同僚議員にこう漏らしたらしい。「沖縄への予算を守るためには、ヤマトンチュー(本土の人)を切ってでも、政権に残らないといけない」と。沖縄一筋なんだよ。古里を愛し、弱い者の側に立つ。俺と一緒なんだよ。

 ≪亀井さんはその後も当選を重ね、17年10月に政界引退を表明する≫

 衆院議員として13期、38年間、精いっぱいやった。政党という枠組みで動く以上、無所属の俺1人じゃ大きなことはできない。そこで地元広島6区で選挙協力をしてきた野党系議員を応援することにしたんだ。

 「亀井節」は止まらない

 野党よ、しっかりしろ。これは俺の持論だが、細かい政策は政権を取ってから固めればいいんだ。そもそも今の政府も、ふらふらした政策ばかりじゃねえか。次の解散総選挙で自民党は負けるよ、俺の勘では。

(2020年2月29日朝刊掲載)

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