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連載・特集

『生きて』 元自民党政調会長 亀井静香さん(1936年~) <20> ご意見番

不正と闘え 次世代へ伝言

  ≪長年の政治活動が評価され、昨年春の叙勲で旭日大綬章を受けた≫

 地元の人たちは喜んでくれた。一方で、亀井もやはり勲章が欲しいのかと思った人もいただろう。でも、俺は断れないんだよ。賞勲制度を今の形にした張本人だからさ。

 ≪自民党政調会長時代に改革を提唱し、太政官布告改正で等級としての勲等は2003年に廃止される≫

 酒は1級、2級などの等級をなくしたのに、勲章で人間に格付けをするのはおかしいだろ。担当の総理府(現内閣府)にもうひとつ指摘したのは官民格差だ。当時は対象が国家や公共に対する功労者とされていたので、民間人よりも「官」出身に偏っていたんだ。俺自身はね、勲章をぶら下げて威張るようなことはしない。今は一介の実業家ですよ。

 ≪航空会社と共同で1988年、空港保安などを請け負う企業「JSS」を設立。会長を務め、子会社で再生可能エネルギー事業も進める≫

 脱原発だよ。兵庫県丹波市で太陽光発電、奈良県五條市でバイオマス発電に既に着手している。小泉の純ちゃんも脱原発を訴えているが彼は言葉の天才。俺は行動ですよ。

 原爆はいかん、でも原子力の平和利用だけは認めていたんだよ、かつての俺は。考えが変わったのは東日本大震災の後だ。原発事故があった福島県に行き「ああ、俺は間違っていたな」と思ったね。人が消えた町で歩いているのは野良牛だけ。この地震列島で原発なんか、やってはいけない危険な産業なんですよ。

 ≪プールでの水中歩行を欠かさず、好んで食べるのは肉や果物という。旺盛な八十路の論客に、次世代へのメッセージを尋ねると―。≫

 不正と闘え。その一言に尽きる。政治をはじめ、今の世はおかしなことばかりじゃねえか。東京一極集中でコンクリートとプラスチックだけの社会。土の匂いがしなくなった国は危ういぞ。やはり地方が元気にならないとな。この春に桜の植樹で、地元の庄原市や三次市に帰る。昔のように皆さんと語り合いたい。この国を、この古里をどうするかって。=おわり(この連載は東京支社・下久保聖司が担当しました)

(2020年3月4日朝刊掲載)

『生きて』 元自民党政調会長 亀井静香さん(1936年~) <1> 官邸の主

『生きて』 元自民党政調会長 亀井静香さん(1936年~) <2> 両親の愛情

『生きて』 元自民党政調会長 亀井静香さん(1936年~) <3> 破壊学生と呼ばれて

『生きて』 元自民党政調会長 亀井静香さん(1936年~) <4> 共学の大泉高時代

『生きて』 元自民党政調会長 亀井静香さん(1936年~) <5> 東大時代

『生きて』 元自民党政調会長 亀井静香さん(1936年~) <6> 核兵器反対運動

『生きて』 元自民党政調会長 亀井静香さん(1936年~) <7> 警察キャリア官僚

『生きて』 元自民党政調会長 亀井静香さん(1936年~) <8> 大立ち回りの捜査2課長

『生きて』 元自民党政調会長 亀井静香さん(1936年~) <9> 国政に打って出る

『生きて』 元自民党政調会長 亀井静香さん(1936年~) <10> カメとヒグマ

『生きて』 元自民党政調会長 亀井静香さん(1936年~) <11> 首相レースの舞台裏

『生きて』 元自民党政調会長 亀井静香さん(1936年~) <12> 自民党下野

『生きて』 元自民党政調会長 亀井静香さん(1936年~) <13> 橋龍のウインク

『生きて』 元自民党政調会長 亀井静香さん(1936年~) <14> 公共事業削減

『生きて』 元自民党政調会長 亀井静香さん(1936年~) <15> 赤プリ5人組

『生きて』 元自民党政調会長 亀井静香さん(1936年~) <16> 政治とカネ

『生きて』 元自民党政調会長 亀井静香さん(1936年~) <17> 郵政解散

『生きて』 元自民党政調会長 亀井静香さん(1936年~) <18> 政界引退

『生きて』 元自民党政調会長 亀井静香さん(1936年~) <19> KK戦争

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