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元乗組員の声 伝承が使命 呉の「大和会」顧問 相原謙次さんに聞く

戦艦大和沈没75年 実物資料集め研究に活用を

 7日は呉市で建造された戦艦大和が沈没して75年に当たり、23日にはその歴史を多面的に伝える市内の大和ミュージアムが開館15周年を迎える。元乗組員や遺族たちでつくる戦艦大和会の顧問、相原謙次さん(65)に、今につながる大和の遺産にはどんなものがあるのかや、今後の活動に懸ける思いについて聞いた。(浜村満大)

  ―大和沈没から75年になります。心境を聞かせてください。
 関係者が少なくなり、元乗組員や遺族に話を聞いた世代としての責任を強く感じている。日本を象徴する艦名を持つ大和の存在意義や、命懸けで戦った元乗組員たちの思いを、若い世代に伝えるのが使命だ。

 大和に関係する技術は製鋼や光学などに応用され、戦後復興や高度経済成長を支えた。戦後に花が開いたともいえる。変わり種を挙げれば、最近の食べ物のイメージがあるタピオカだが、実はデザートとしてタピオカプリンが大和でも食されていた。

  ―15周年を迎える大和ミュージアムの開設にも尽力されましたね。
 当初は反対意見ばかりだった。世界で初めて原爆が投下され、平和学習に力を入れる広島では理解されにくかった。だが、海軍の拠点ができて発展した呉を代表する戦艦は大和だと確信していた。

 私も参加した1999年の大和の潜水調査時の引き揚げ品など、裏付けのある資料展示にこだわった。注目を集めないわけがないと思っていたが、年間100万人を超す来館者は、予想をはるかに上回った。

  ―大和ミュージアムに期待することは。
 元乗組員や遺族の高齢化が進み、資料の実物を収集できる最終段階に来ていると思う。学芸員たちには足を使って集め、展示や研究に生かしてほしい。来館者の関心を呼び続けることにもつながる。

  ―今後への意気込みを聞かせてください。
 若い世代への伝承活動はもちろんだが、定期的に潜水調査を実施する重要性を感じている。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「水中文化遺産」登録を見据えた取り組みも進めていきたい。

 大和の船体などの状況が調査のたびに異なり、劣化が進んでいることも確認できた。海底の大和は墓標との考えもあるが、引き揚げも含めてどうすべきか考える時期を迎えている。

あいはら・けんじ
 呉市出身。広島修道大を卒業後、1977年から市職員。99年の戦艦大和の潜水調査や、2005年開館の大和ミュージアム整備などに尽力した。戦艦大和会を再興し、14年から顧問。15年に定年退職後も、大和をテーマに各地で講演を重ね、歴史を生かしたまちづくりの提言を続ける。

(2020年4月7日朝刊掲載)

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