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核軍縮「停滞・逆行の連鎖」 「ひろしまレポート」36ヵ国採点 19年 16ヵ国が評価下げ

 広島県は14日、核兵器を巡る世界36カ国の2019年の取り組みを3分野で採点した「ひろしまレポート」を公表した。核軍縮の分野では16カ国が前年と比べて評価を下げ、10カ国は変動なし。米ロ間の条約失効や米国の情報公開の低下で「停滞・逆行のスパイラル(連鎖)」と分析した。核兵器禁止条約を批准した国が評価を上げる中、後ろ向きな日本は変わらなかった。(宮野史康)

 県の委託で取りまとめをしたシンクタンク日本国際問題研究所(東京)の戸崎洋史主任研究員(軍備管理・不拡散問題)は、新型コロナウイルスの感染防止対策としてインターネットを通じて記者会見した。「米国の力が相対的に低下し、安全保障環境が悪化している。外交よりも核抑止力を重視する認識が広がっている」と警鐘を鳴らした。

 36カ国の内訳は、核拡散防止条約(NPT)上の核兵器保有5大国、事実上持つ4カ国、非保有国のうちの27カ国。研究所が、19年の動向を踏まえて核軍縮、核不拡散、核物質の安全管理の3分野計65項目で採点し、満点に対する割合を示す「評点率」で評価した。

 核軍縮の採点は32項目。核兵器を持つ9カ国中、最高は核兵器を15個減らした英国だが、27・3%にとどまった。6カ国は悪化。米国はロシアとの中距離核戦力(INF)廃棄条約の一方的離脱、核兵器保有数の公表停止など4項目で後退し、11・8%だった。下げ幅は4・0ポイントで、保有国最大。米朝首脳会談で非核化に合意できなかった北朝鮮は最下位のままだった。

 核兵器禁止条約を19年末でみると、署名は前年より11カ国増えて80カ国となった。批准は15カ国増の34カ国で、発効要件の50カ国へ近づく。調査対象国では南アフリカとカザフスタンが新たに批准し、評点率が上昇。日本は署名も批准もせず、国連総会での核軍縮決議の投票行動も同じで、評点率は変わらなかった。

 核不拡散は、イランの核開発能力を制限した「核合意」を巡って応酬を続ける米国とイランなど4カ国が下げた。核物質の安全管理では唯一、米国が低下。メキシコ、ポーランドなど6カ国で改善し、ロシアなど29カ国は変わらなかった。

 20年は新型コロナの世界的流行で、米国で4月下旬から予定されたNPT再検討会議が延期された。戸崎主任研究員は「現状を前に進めるための時間と捉えてほしい。日本は核抑止への依存を減らし、どう安全保障環境を高めるか、政府、専門家、市民社会が議論する必要がある」と語った。

(2020年4月15日朝刊掲載)

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