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丸木位里展 ピンチ 奥田美術館15周年で来月予定 コロナ禍で搬入困難

 三次市東酒屋町の奥田元宋・小由女美術館が準備している画家、丸木位里(故人、広島市安佐北区出身)の作品展の開催が危ぶまれている。新型コロナウイルス感染拡大の影響で同館は11日から休館中。開幕を25日から5月中旬に延期したものの、緊急事態宣言の対象地域が全国に広がる中、展示の準備ができない状況が続いている。(石川昌義)

 「墨は流すもの―丸木位里の宇宙」と題した特別展(中国新聞社など主催)は、同館の開館15周年を記念した企画。1920年代の最初期に描いた美人画を初公開するほか、晩年までの作品計約100点を展示する。丸木位里の作品展としては過去最大級となる。

 展示する約100点のうち、約70点は「原爆の図丸木美術館」(埼玉県東松山市)が所蔵。他の作品は、北海道から沖縄の美術館や個人が所蔵している。しかし、緊急事態宣言の対象が全国に拡大したため、美術館などでの梱包(こんぽう)や運搬が進まず、作品搬入の見通しが立っていないという。

 現時点では、5月中旬に開幕する予定。今回の特別展は三岸節子記念美術館(愛知県一宮市)と富山県水墨美術館(富山市)を合わせた3館が連携した展示会で、6月21日の閉幕は変更しない。奥田元宋・小由女美術館の植田千佳穂館長は「愛知県の感染拡大の状況も深刻。緊急事態宣言が延長されれば、計画そのものの見直しは避けられない。大型連休明けまでに5月中旬に開幕できるかどうか判断したい」と話している。

丸木位里
 1901年、現在の広島市安佐北区安佐町飯室生まれの画家。23年に上京し、日本画家田中頼璋に学んだが、同年の関東大震災後に帰郷。30代で再び上京し、前衛的な水墨画を残す。戦後は妻で洋画家の俊と「原爆の図」を共同制作し、反戦画家として知られる。95年には夫妻でノーベル平和賞候補になった。同年に94歳で亡くなった。

(2020年4月24日朝刊掲載)

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