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原爆資料館リニューアル1年 滝川館長に聞く 被爆遺品重視 期待した成果

コロナ後見据え混雑対策

 原爆資料館(広島市中区)は25日、本館のリニューアル開館から1年を迎えた。国内外で高い注目を集める一方、現在は新型コロナウイルスの感染拡大による臨時休館が続く。昨年4月に就任した滝川卓男館長(61)に、手応えや課題を聞いた。(明知隼二)

  ―リニューアル開館から1年がたちました。
 遺品などの実物資料を重視し、一人一人の悲しみや苦しみを感じてもらえる展示を目指した。過去最多の入館者数を記録しただけでなく、私が案内した各国の要人も「被爆の実相がよく分かった」と受け止めてくれた。期待通りの成果があったと感じている。

  ―案内で特に力を入れるポイントはありますか。
 学徒の遺品が並ぶ「集合展示」に時間をかけている。なぜ中学1、2年の子どもがこれだけ集中して被害を受けたのか。当時の日本が子どもを屋外での作業に動員した結果であり、背景を丁寧に説明している。

  ―全体的に説明が抑えられ、そうした背景が伝わりにくいとの声があります。
 遺品と遺影に向き合う「魂の叫び」コーナーなどはしっかりと説明していると考えているが、そうした指摘は確かにある。新たに設けた有識者会議の意見を聴きながら、改善できる点はしていきたい。

  ―混雑も課題でした。
 開館直後は押し合いへし合いの状態になった。新型コロナの影響で延期になった修学旅行が秋に集中する可能性もあり、対策が必要だ。混雑期の開館時間の延長、整理券の配布などを検討している。

  ―臨時休館が続きます。
 資料館は広島の象徴の一つで、長引けば被爆の実態の発信にも、経済にも影響が大きい。だからこそ世界中から人が集まり、感染リスクも大きい。今は人命が最優先で、やむを得ない。

  ―これからの資料館の役割をどう考えますか。
 被爆者が年を重ねる中で「永遠の語り部」にならなければならない。資料の保存はもちろん、次世代への継承が大きなテーマだ。今も被爆証言の伝承者、高校生や大学生のボランティアの育成などをしている。派手な解決策はないが、小さな積み重ねが大切だ。

(2020年4月26日朝刊掲載)

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