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航空戦力支えた拠点 証明 戦闘機エンジン「誉」 呉で発見

第11空廠 地中に工場

 大和ミュージアム(呉市)に寄贈された戦闘機用エンジン「誉(ほまれ)」は、太平洋戦争末期、日本の劣勢を立て直そうと呉市広地区の第11海軍航空廠(しょう)で量産が急がれていた。跡地にある米陸軍広弾薬庫からの出土について、識者は「航空戦力を支える拠点として呉に寄せられた期待を物語る」と話す。(道面雅量)

 同ミュージアムによると、誉は第11空廠では1943年ごろから生産を開始、終戦時には月産120基を目標に量産体制にあった。主要部のクランクケースの製法を、熟練工がたたいて成形する鍛造から、より容易な鋳造にするなどの模索がなされたという。

 出土後に米軍側からの問い合わせを受け、学芸員と共に現地で実見した戸高一成館長は「土汚れや腐食が激しかったが、特徴的な形から、誉だとすぐ確信した」と話す。海軍工廠史を研究する広島国際大の千田武志客員教授は「第11空廠は空襲対策で地下部分が多い。地中に埋もれることで戦後、占領軍による接収や破壊から免れた可能性がある」とみる。

 元航空エンジン技術者で誉に関する著書のある前間孝則さんは「誉は、背伸びして新鋭兵器を求めた当時の日本を象徴するエンジン」とする。緻密で繊細な構造のため、資材や燃料の低質化の影響を大きく受け、高い性能を実戦で発揮できなかった。その中で量産に挑んだ第11空廠について「軍が寄せた期待の大きさをあらためて実感させる」と語った。

(2020年5月29日朝刊掲載)

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