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観光地 にぎわい徐々に 中国地方 感染第2波懸念も

 新型コロナウイルスの感染防止に向けた外出自粛要請などが緩和され、中国地方の観光地で人出が戻り始めている。6日、尾道や廿日市、山口市ではにぎわう様子が見られ、広島市中区の原爆資料館は再開後初の週末を迎えて来館者がじわり増えた。ただ、以前の活気にはほど遠く、感染の「第2波」を懸念する声もある。(筒井晴信、森田晃司、東聡海)

 尾道市中心部の尾道本通り商店街。ほとんどの店が営業を再開し、大勢の親子連れやサイクリング客が買い物などを楽しんだ。近くの老舗ラーメン店の「つたふじ」では正午すぎ、10人近くの行列ができた。

 「3密」を避けるため、整理券で入館が制限されている原爆資料館では午後から入館者が増え、整理券の配布数は400以上。今月1日の再開後の平日の2倍以上となった。札幌市で日本語を学ぶカナダ人のパク・アルバートさん(29)は「帰国する前に歴史を学びたいと思って来た」と話した。

 世界遺産の島・宮島(廿日市市)も家族連れでにぎわった。宮島松大汽船(同)によると、この日のフェリー乗客数は緊急事態宣言中の週末の約4倍。府中市の会社員渡辺哲さん(51)は「自粛疲れでストレスがたまっていたので、久しぶりに家族で外出できてうれしい」と話した。島内でもみじまんじゅう店を経営する坂本恭弘さん(60)は「常連客もまた買いに来てくれるようになった」と喜ぶ。

 一方、観光客の回復状況は県外からの吸引力などによって違いも見える。尾道市の千光寺山ロープウェイの利用者は先週土曜日と比べ40人近く多い約410人。しかし、団体や外国人の利用はほとんどなく、前年同期の3割程度にとどまる。運営するおのみちバスの村上昌広係長は「遠方からの団体客が戻らないと厳しい」と嘆く。

 千光寺の参拝客も例年の1割程度。多田真祥住職(51)は「感染拡大の第2波を心配する人が多いのではないか。(観光客が)戻るまで何年もかかるかもしれない」と不安を口にする。国宝の瑠璃光寺五重塔がある山口市の香山公園でも県外からの客は緩やかに戻り始めたばかり。市観光ボランティアガイドの会の森文子会長(69)は「一日も早く収束し、いつものにぎわいが戻ってほしい」と願っていた。

(2020年6月7日朝刊掲載)

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