×

ニュース

被服支廠 戦時の記憶写す 映像監督 新井さん撮影 千人針テーマに記録

 川崎市在住の写真家で映像監督の新井卓さん(42)が6日、広島市最大の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」(南区)で、第2次大戦中に兵士の無事を願って赤い糸を通した布「千人針」をテーマにした映像作品の撮影に臨んだ。保存・解体論議で揺れる被服支廠を記録したいと企画した。

 戦時中、実際に千人針を縫っていた山口ミツヱさん(92)と、土屋時子さん(71)=いずれも中区=の親子と、孫役を演じる20代の女性が出演。赤い糸で布に縫い玉を作る様子を撮影した。当時、呉市の女学校に通っていた山口さんは「武運長久を祈り婦人会の人たちと縫った」などと回顧。「戦死された方、残された人のことを思うと今でも涙が出る」と話した。

 作品は20分程度の予定で、軍需品を生産していた被服支廠のかつての写真や、現在の様子も入れる。千人針も被服支廠の稼働も同じ戦時の営みであることも踏まえ撮影現場に選んだ。新井さんは「実際にあったことを追体験することで当時が想像しやすくなる」とテーマを選んだ理由を説明。被服支廠については「残すのはもちろんだが、現代において私たちがどう関わっていくべきかも考えたかった」と話した。

 作品は7~10月に横浜市内である「横浜トリエンナーレ」に出展する。(高本友子)

(2020年6月7日朝刊掲載)

年別アーカイブ